玄関の横に納戸

現在工事中のH邸にはいろいろなアイディアが詰まっているのですが、その中でも個人的に羨ましい部屋があります。それは納戸なのですが、玄関とは別に入り口が設けてあり、納戸からも家に入ることができるため、例えば雨の日に納戸で濡れたコートと泥のついた靴を脱いでから家に入る、トイレットペーパーやおむつなどの消耗品を棚に収納してから家に入る、大切な自転車を壁にかけて保管するなど、活用法がたくさんある実用的な部屋です。

 
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上記のスケッチは基本設計当初の案。お施主様からのご要望で折りたたみ式の机を取り入れたり、減額調整の一環でハンガーラックは弊社製作のものに変更したりしていますが、部屋のプロポーションなどは特に変更なくこの通りになっています。ものすごく背高のっぽの部屋。設計者がいうのも変ですが、不思議なスケール感のある部屋です。下の写真は先週の現場の写真になります。

 
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そして今週は棚が入っていました。棚の芯材が壁の後ろまで差し込む仕様になっています。壁の一部に石膏ボードも貼られていますが、この上に仕上げ材としてラワン合板を貼ります。この部屋は天井も含めラワン貼りになります。

 
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紙の上だけに存在した縮尺図が実際に実寸で3次元の形となるプロセスは感動以外の言葉で表現できません。夢にも出てくるほどなんどもなんども同じところを考えるプロセスを繰り返して設計に至っているため、その設計や詳細が美しく施行され、思っていた通りのいイメージとなる時、この上ない喜びを感じます。

設計段階の小さな喜び

建築家にとってこの上ない喜びはお施主様が設計した建物を気に入ってくれて長く大切に使っていただくことですが、設計段階でも小さな喜びが散りばめられています。弊社ではいろいろなスケッチを打ち合わせでお見せします。現在工事中のK邸では「風通しのいい家」をテーマに進めているため、既存の壁を取っぱらい、高さ1.8mの家具で機能を区切って上はスカスカにしています。そのコンセプトの要となる家具のイメージをより具体的に想像していただくため、このようなスケッチを描いてお見せするのが通常ですが、その時、お施主様が驚いたり喜んだりしていらっしゃる姿を見るのが私の設計段階のプチ喜びになっています。そしてお施主様にとってもこの様なスケッチがプチ喜びになっているといいなと思っています。スケッチの多くは採用されないのですが、それでもこのプロセスを大事にしていきたいです。

 

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コンピューターなどの技術が進み、模型を作ったり、手描きでパース図や詳細図を描くのは時代遅れなのでは?とお考えになる方もいらっしゃるかもしれません。アメリカの事務所ではBIM(building information model)は当たり前で導入すべきはVRでのプレゼンでしょ!ということころまで進んでいます。私もBIMプロジェクトはアメリカで10年以上前に経験ずみです。ただし、プレゼンに関してはプロジェクトの種類や規模によって方法を変えるのが一番いいのではと考えています。弊社ではスケッチアップとVrayというレンダリングのプログラムを導入して、手描きスケッチでは表現することが難しい透明感、複雑な図形、リアリスティックなテクスチャーなどを表現することを実験的に進めています。人の心をより強く動かすのは綺麗すぎるほどの直線なのか、本物っぽく見えるツルンとしたイメージなのか、それとも線の太さが均一でなかったり、濃淡が均一でなかったりする線なのか、雑だけど雰囲気が柔らかく伝わるスケッチ図なのか。今後、少しずつ実験をしながら、プレゼンの表現領域を増やしていこうと考えています。