屋根について
H邸の屋根はガルバリウム鋼板の立平ハゼ葺きです。契約時には屋根端部のたち下がりを可能な限り最小寸法にしたかったためシート防水を入れていたのですが、工務店からシート防水だと屋根端部の通気を塞がないと防水は保証できないと言われました。昨今の台風や大雨で過去物件の修理などが増え、「家を守る」「施主の生活を守る」「会社を守る」という意味でも保守的なスタンスをとらざるを得なくなっているとのこと。アフターもしっかり見てくださるという意気込みがあるからこそのありがたい方針だとは思うのですが、屋根端部の通気を塞ぐことはせっかく設けた壁と屋根の通気層の空気の出口がないという状態。暑い夏の日に通気層にて熱くなった空気の出口がない場合、ただ単にその層に暑い空気が溜まるだけ。そもそも通気層を設けない壁や屋根で建てる家もあるから、ある程度の断熱効果はあるとしてよしとすることもできたかもしれないけど、せっかく吹付断熱で断熱性と気密性を高める予定なのに、何か矛盾を感じてしまう。ということでものすごく悩みました。悩んだ結果、ガルバリウム鋼板の屋根に変更することにしました。
しかし、ガルバ屋根で一番気になるのが端部の見え方。端部はどうしてもシート防水の収まりと比べるとぼてっとしてしまう。可能な限りシンプルに見せたい。立ち下げの寸法や折り曲げの寸法、これは可能か、あれは可能か、と板金屋さんに何度も相談しました。立ち下げ寸法の50を縮めることはできなかったのですが、他において少しでもすっきり見せる方法にしていただくことになりました。ちなみに、板金の特徴を理解するという意味でも一番てっとり早いのが模型を作ること。何ができるか、どこから水が侵入しやすいかなど、直感的に理解できます。左が通常の折り方。右は今回の折り方。
板金屋さんも実際の材料で小さな模型を作って、通常の折り方と今回の折り方の違いを見せてくれました。面倒臭い工程が増えるのを承知ですべての接合部においてこの折り方を快諾してくれた板金屋さんには感謝しかありません。建築家の思いを汲み取ってくれる素晴らしい職人さんでした。
そして実際の施工はこちら。ほんの少しの違いかもしれないのですが、このような、どうでもいいんじゃない?と思われるような小さなこだわりが積み重なっていい建築ができると信じています。現場はお盆でも外壁塗装工事を進めています。