減額調整
今日はあんまり話題にしたくないお金のお話。
一昔前の「坪単価80万円でいい家が建った」という感覚はもう通用いたしません!と声を大にしてお伝えしたいです。そもそも消費税10%が導入された時点でその金額は88万円になるわけで、価格がどんどん値上がりして、省エネの基準がどんどん厳しくなるのに同じ金額で建つわけがない。海外の物価は2倍3倍に跳ね上がり、輸入資材も郵送費も全てコストアップ。ウッドショックで合板一枚でさえ単価アップ。金属単価アップでアルミサッシもガルバリウム鋼板の金額もアップ。業者さんの人件費もアップ。ガソリン代もアップ。いやぁ・・・本当に厳しいです。テレビ番組の「こんなに安く建てました!」という都合のいい話の多くは外構費やエアコン設備工事費や消費税を除いた金額。絶対に鵜呑みにしていただきたくないです。ただ、コストを恐れて夢を見ないでくださいとお伝えしているわけではございません。見積もり前は思い存分夢を見る時。見積もり後は現実と向き合う時。減額調整を決してネガティブに暗く捉えるのではなく、自分にとってのプライオリティとは何かを理解した上で減額調整に臨むと、そのプロセスも案外楽しくできるものです。
戸建住宅ではないですが、リフォームも然り。C邸のマンションリフォームはやっと減額調整が終わり今月中に着工を予定しております。予算は十分あるとお施主様も私も思っていましたが、見積もりが返ってきて、現実を突きつけられました。40平米ちょっとのスケルトンリフォームで1000万円超えだったのです!キッチンは大きく減額できた項目の一つだったのでこちらで紹介したいと思います。下のイメージが原案。半オーダーメイドのレンジフード(←本当に高かった!)、手の届かない位置にある吊り戸棚(←かっこいいけど、手が届かないと普段使いできないですよね)、カウンター下は全て引き出し(←これはキープしたかったけど、引き出しは高い!)最高峰の浄水器シーガルフォーの導入(←最高峰出なくても美味しい水は飲める!)などが高い理由でした。
減額調整第一弾では半オーダーメイドのレンジフードを照明器具付きの既製品に変更、レンジフード横の照明器具の中止、手の届かない吊り戸棚を中止、カウンター下の引き出しの一部を観音開きの扉に変更、浄水器とキッチン水栓を一体に変更、浄水器を一般的なものに変更。これで約60万円(税別)の減額。
あともう少し減額したかったのでお施主様と相談して減額調整第2段ではガスコンロは施主支給、吊り戸棚を全て中止して棚を2枚設置。これでオッケーをいただきました。この変更によって御施主様が不自由することは何一つなく、むしろ、この棚の上にどんな素敵なものを置こうかしらというワクワクの楽しみが増えたようです。灰色の配分が減り、空間が明るくなったのもプラス要素。この一連の減額調整で約90万円(税別)減額できたし、御施主様の提案も取り入れることができたし、減額調整ってポジティブに捉えることができる!という成功例でした。
御施主様の中には建築家にこの予算でお願いしたのに、予算オーバーの設計をするのはプロとしてどうだろうかとお考えの方も多くいらっしゃると思います。ただ、建築家は御施主様にとって最高の設計を提案するというのがプロとしての仕事だと思っているので、ご要望リストを元に予算は心の片隅に置きつつも御施主様と一緒に大きく夢を見てしまうんですよね。価格の高騰も我々の想定以上、見積もりが返ってきて初めて現実と向き合うことが多いです。弊社では減額調整に時間がかかることを契約前からお伝えしております。ハウスメーカーさんだと設計当初から金額がわかるという意味で安心して頼めるので、そこが建築家+工務店にお願いする時との違いなのでしょうか。ただ、唯一無二という意味ではやっぱり建築家+工務店をおすすめしちゃうなぁ・・・