家の価値
家の資産価値が20年後にはゼロになると言われている日本で、家にお金をかけるのは賢くない。いい土地にお金をかけ、上物にかける費用は抑えたい。抑えた費用でかっこいい車を買いたい。お洋服を買いたい。旅行をしたい。そう思うのは当然ではないでしょうか。私も自邸を建てる時、いろいろな計算式が頭を横切りました。土地のチラシ等に書かれてあるサンプル間取りとその価格の安さに唖然とし、その何倍もの価格で家を建てようとしている我々の決断は果たして正しいのだろうか。と何度も迷いました。家は電化製品、家具、車などの購入とは全く性質の違うものだと思います。何千万円、何億円と言う大金が動く大きなお買い物であり、一生に一度のお買い物になる可能性もあります。
だからこそ、だからこそです!私は声を大にしていいたいことがあります。一生に一度あるかないかのお買い物であるからこそ、どれだけ安く作るか、老後高く売れるか、を基準の軸にするのではなく、自分にとって、家族にとって日常の豊かな生活を手に入れるにはどうすればいいかを基準の軸にして進めていただきたいのです。私は自分が設計した家に2年前から住み始めています。この家は我々のライフスタイルに適した設計となっていて、引っ越す前から楽しくなるだろう。と想像はできていましたが、実際住み始めてわかった事があります。それはこの建築がもたらす毎日の喜びは私の想像を絶するものであったという事。そしてその喜びは数値化できません。プライスレスなのです。もちろん毎月のローン返済に悩まされ、外食や旅行、買い物を減らしているのは事実です。外食をする代わりに大好きなキッチンで料理をする。旅行をする代わりに光がさんさんと入るリビングルームで読書する。違う形の楽しさをこの家の中で見つけています。毎日の何気ない幸せが、喜びが、家の価値となり、20年後には20年間分の思い出となって積み上げられるのです。
家の資産価値と家の価値は全く別物なのではないでしょうか。家を建てるときは家の「資産価値」にとらわれるのではなく、家の「価値」に軸をおいて建築家と家つくりに取り組んでいただくことが、より豊かな建築への鍵なのでないかと思うのです。