脳の訓練

一級建築士の資格を持っていながらも、アイディアコンペをする意味があるのだろうかとたまに思うことがある。参加者のほとんどは20代。アイディアコンペは直接的な意味で仕事に繋がるわけではない。与えられたテーマや問題を自分なりに解いて2次元の媒体で表現するわけであるが、相当なエネルギーも時間もかなり使う。しかし、弊社ではどんなに状況下においてもコンペに参加することに意義があると考えている。通常は考えない「なにか」について深く「考える」という時間と試練を強制的に与えることが我々建築家にとって必要だと思うからだ。また、実際に建つプロジェクトは予算や土地による制限、表現の自由に限りがある。しかし、アイディアコンペはなんでもありだ。構造や法規について特にシビアに考えなくて済んだあの学生時代に戻って1キロのキャンチを提案したって誰も殺されやしない。絶対的不可能な空間を提案してもいいのだ。どうやったら可能になるか、どうやったら予算以内に入るかを考えるときの建築家たるべき脳の活動領域から逸脱し、別の領域を活動させる。もはや脳の訓練、エクササイズとして捉えるべきであろう。今回参加したコンペは「大きさの家」と言うテーマであった。大きさは国によっても文化によっても人によっても捉え方や考えに差異がある。かなり曖昧で抽象的なテーマではあるが、その「大きさ」と言う概念を更新する住宅はなんであるかを考えると言う課題である。

弊社は日常生活を縦に表現し家具の中に収め、その生活を見せるということで、人の大きさや動き、日常生活とその動作に必要な大きさに対しての新たな認識が生まれるのではないかと思い、この「日常生活家具の住宅」を提出した。しかし、今回のコンペで求められていた「大きさ」の概念を更新しているわけではないと、結果発表を見て改めて反省。また、表現の仕方についても既視感を感じさせるような絵では全く古いものにしか見えない、とこれまた反省。でも、楽しくコンペができたのでこれはこれで良しとする。

 
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