より少なく豊かな家 Less is More House
施主は70代の夫妻。子育ては随分前に終わり、飼っていた犬もなくなった。さぁ、これからどうしよう。残りの人生はどのくらいあるのだろうか。どんな風に過ごしたいか。たくさんの自問の時間があり、心の声はこう答えた。最後は大切に思うものだけを所有して、丁寧に時間を過ごしたい。だから、多くはいらない。削ぎ落としていきたい。
施主からの依頼はマンションのリノベーションで、リビング、ダイニング、キッチン、和室、トイレを変えたいということだった。典型的なマンションの間取りは隔離された暗いキッチンが長細く、ダクトを隠すために天井は低くとられ、それに合わせて、ダイニングエリアの天井も低い。梁と柱は不必要に強調され、いたるところが何故かデコボコだ。和室は奥に追いやられ、非常に暗くて陰湿である。必要なものだけを残すのが今回のテーマ。よって、1つの大きな空間を作った。梁によって作られた窪みに2.6mのソファエリアを設け、施主の好きな色、緑で部屋の雰囲気を施主色に染めている。3.7mの長いキッチンは食の大切さを常に語る施主が頻繁に立つ場所。そこに壁はいらない。客が泊まる際は奥のエリアを2枚引き戸で区切ることができる。必要な寝具はその脇にあるクローゼットに収まっている。既存廊下への明かり取りと空気の流れを作るために、和紙を貼った細長い小窓もある。
竣工写真は竣工から1年以上過ぎた写真だが、物は増えることなく快適に過ごしていただいている。
用途 個人住宅
リノベ面積 約40㎡
設計監理 まる・ち設計 知念里奈
施工 ホームビルダー
竣工年 2023
写真 中村絵
Program Residential
Renovatd Area approx. 40㎡
Design MARU・CHI /Rina Chinen
Contractor Homebuilder
Year Completed 2023
Photo Credit Kai Nakamura