丘の家 Hilltop House

用途    個人住宅
構造    木造
規模    地上1階
敷地面積  2046.60㎡
建築面積  81.15㎡
延床面積  77.54㎡
設計監理  まる・ち設計 知念里奈
構造設計監理 オーノJAPAN 大野博史 藤田竜平
施工    池田工務店
竣工年   2023
写真    矢野紀行

Program                Residential
Structure               Wooden Construction
Floors                    1 Floor
Site Area               2046.60㎡
Bldg. Footprint      81.15㎡
Overall areas         77.54㎡
Design                   MARU・CHI /Rina Chinen
Structural Design  OHNO JAPAN  
                              Hirofumi Ohno  Ryuhei Fujita
Contractor             Ikeda Komuten
Year Completed    2023
Photo Credit         Noriyuki Yano

2020年。コロナが蔓延することで誰しもが否応なしに生活や住まいの質について、また、今後起こり得る災害や疫病について考えさせられたのではないか。パンデミックでは一歩も外出が許されない日が続いた。東京に住む人の多くは息が詰まるような空間に閉じこもり、将来への不安と焦りに駆り立てられたであろう。東京の生活には東京の生活なりの良さがある。しかし、万が一の非常事態において、第2の拠点と言えるような広々とした場所があればどれほど心強いだろうか。自給自足を目標に田畑を耕し、自然の恵みを享受し、自然と共生して、自然に感謝することでより人間らしい生活ができるのではないか。そんな漠然とした思いが通じたのか、「大草原の小さな家」の舞台のようなAndrew Wyethの絵画のような大自然に囲まれた広大な敷地に施主は導かれたのである。段階を踏んで完成していく別荘を建てたいという最初のご要望を受けて母屋、畑、収納小屋、風呂場、ゲスト部屋などを少しずつ増やせるような設計から始まり、最終的には家族が心地よく過ごせる最小単位の小さな家を設計することとなった。

家は長細い四角い箱の上に折り紙で折ったような薄い屋根をのせたシンプルな作りとなっている。背の低い玄関を抜けるとそこには南側の自然が見渡せる大開口のある背の高い空間につながる。寝室とリビングルームの間に設置した箱は、リビングルーム側にキッチン、箱の中には冷蔵庫や洗濯機、洋服などを置く収納とした。室内の梁を表しとして、小さな家なりに奥行きを感じられるようにしている。家庭菜園、庭や芝のお手入れ、雪かきなどに必要な道具などを収納できるストレージスペースを設け、外からは一見扉に見えないような勝手口も用意した。温泉が近くにある立地のため浴槽は設けずシャワー室のみとしている。薪さえ準備すれば電気やガスに頼らなくて済む薪ストーブは家全体を十分に暖めてくれる。最小単位の住宅ではあるが、大きなデッキにむけて広がりのある作りとなっている。